HANGAME
[三星火災杯]あれこれ/ "ちょっと誰かドアを開けてくださいよ!"

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▲ 2016三星火災杯ワールド囲碁マスターズ4強に上ったイ・セドル9段(右側)と3人の中国棋士。


■ 2016三星火災杯16~8強戦エピソード

先週開いた2016三星火災杯ワールド囲碁マスターズ16強戦と8強戦で韓国はイ・セドル9段だけが4強に進出した。 4強の残りの3人は中国棋士であった。 コ・ジェ9段、トゥ・ジャシ9段、ファン・ウィンルオ5段だ。

このような韓国1人、中国3人の構図は前期大会と同じだ。 イ・セドルが韓国の唯一の生存者であることも前期大会と同一だ。 それだけでなくイ・セドルがコ・ジェと準決勝戦を繰り広げることになったのも前期の再現だ。

国内ファンたちの関心はイ・セドルがコ・ジェを破って、更に進んで優勝カップを上げるかに注がれている。 コ・ジェは前期準決勝でイ・セドルに勝利した気勢を買って優勝カップまで持ち上げた。

イ・セドルにとってコ・ジェは'天敵'とも同じだ。 通算戦績で2勝8敗で後れている。 このようにイ・セドルがスコア上で大きく押される相手はコ・ジェのほかはいない。 勝った二対局も五番勝負で競った夢百合杯決勝であったから(結局2-3で負けた)イ・セドルの痛みは到底話すことはできない。

敗れたストレスは勝って返すことが最高だと話すイ・セドルは"今度は復讐したい"と話した。 4強戦は、31日からサムスン火災ユソン研修院で三番勝負で進行される。 2勝をおさめる側が決勝に進出する方式だ。

大会最多である4回優勝記録を持っているイ・セドルは2004年と2009年大会ではたった一人で4強に上って3人の中国棋士を抜いて優勝したことがある。 イ・セドルの善戦を期待して2年ぶりにサムスン火災ユソン研修院で行った16強戦および8強戦のエピソードを伝える。

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▲携帯電話で打ってヨセを試みる中国棋士。 左側からジョウ・ルイヤン9段、トゥ・ジャシ9段、コ・ジェ9段、タン・シャオ7段。
 

"置く手があるじゃない" 

敗北は痛くて残念だ。 16強戦中でもシン・ジンソ6段の逆転負けは応援したファンたちにも大きい物足りなさが残った。 5時間を超えて最も長く打ったこの局を、先に対局を終えた中国棋士が大会場廊下で携帯電話で検討していたがコ・ジェ9段が'検討'でヨセを進めた結果シン・ジンソの半目勝ち。 

ところが暫くして右上隅に置く手があるとし4名の中国棋士は対局場まで声が聞こえるほどの歓喜。 実戦のファン・ウィンルオ5段も1目得するその手を打って結局16強チケットを握った。 良い囲碁を失ったシン・ジンソは復碁の時沈黙で一貫。

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▲ファン・ウィンルオの黒1がヨセの妙手。 以後白がどのように応酬しようがこちらの白地は'8目'になる。 実戦ではシン・ジンソが投げ場を求めたことで、まともに打つならば8まで'8目'確定。 黒1でみな打ったとし5につないでは白8で引き続き白地は'9目'になる。

 

"ちょっと誰かドアを開けてくださいよ!" 

ユソン研修院の宿泊施設は'マンション棟'と'ホテル棟'で構成されているがたいてい韓国棋士をマンション棟に、中国棋士をホテル棟に配分。 ベッドとトイレだけのホテル棟に比べてマンション棟は二ヶ所の寝室に居間と台所用品まであって特に韓国棋士が好む。

ただしマンション棟で留意する点はベランダを利用する時。 外に出て行った後なにげなく居間と連結された門を閉めたらそのまま立ち往生することになる。 そのようなことが真夜中に一選手から発生。 深夜12時を越えた時刻に風に当たりに出て閉じ込められてしまったが管理職員さえ退勤したあとなので非常ベルも無用の物。 

2階から1階に飛び降りることもできないので結局最後の手段として大声を出したのが上手く下の階の居間で寝ていた韓国棋院の職員に伝わって30分後に脱出(?)。その余波のためなのか16強戦は惜敗。

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▲ '三星火災杯の聖地'ユソン研修院。 左側がマンション棟で右側がホテル棟だ。



"パク・ジョンファン輸送作戦" 

パク・ジョンファン9段は8強戦を終えて夜には囲碁リーグを打つ'ダブルヘッダー'を消化。 それもテジョンからソウルに移動して一日二対局を打つ強行軍。 Tブロード主将を受け持っているパク・ジョンファンは国際戦参加ですでに五回も欠場したことでチームに申し訳ない気持ちが大きくて出場を自ら要望したという後日談。

問題はテジョンとソウル間の距離、そして囲碁がいつ終わるか。 チーム関係者は8時30分に始める囲碁リーグ試合前にたどり着くためには遅くとも5時頃には出発できるようにスタンバイ。 もしかすると混雑する場合に備えてバス専用車道を利用できる車両を準備。

終盤の追撃戦も無為に帰して敗れたパク・ジョンファンは4強戦対戦抽選をする必要がなくなったので20分近く余裕あるように(?) 復碁した後に小走り(チームのポストシーズン進出がかかった囲碁リーグ試合では決勝点でチーム勝利を導いた)。

このような状況を相手対局者であるファン・ウィンルオは知っていたのだろうか。 万一知っていたとすれば'時間延長'作戦を実行したかもと気になった。 

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▲復碁中のパク・ジョンファン9段(左側)とファン・ウィンルオ5段。

 

"タン・ウェイシンの8強脱落は必然(?)" 

空気がきれいで諸般の条件がよく取りそろったユソン研修院が囲碁大会場として最適な環境という評価を受けている。 特に中国のタン・ウェイシン9段はこちらにくるたびに並みはずれて早くから朝食をきちんと支度して食べるなどニコニコ。 

2013年優勝、2014年準優勝、2015年4強成績を出したので三星火災杯に特化した選手という話が出るのも行き過ぎではないようだ。 問題は毎年一段ずつ下落すること。 だからだろうか、今年はイ・セドルに敗れて8強で締め切り。 これもジンクスなのか。

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▲タン・ウェイシン9段との8強戦を勝利したイ・セドル9段が復碁を終えて対戦抽選のために立ち上がっている。 記者に向かった最初の言葉が"ジョンファンは勝ったでしょう?"であった。



"大きく期待しなかったです" 

現地記者室には早い時刻から初めて見る外国人女性記者が訪問して注目。 話を聞いてみるとイ・セドル9段をインタビューするために日本からわざわざきたとのこと。 通訳まで同行したこの記者はしかしAlphaGoと対決した後に変わった点をインタビューするところには失敗。

勇敢にも(?) 事前に何の約束もなしできたことが失着ならば失着。 ところがこの記者が戻ってした話が印象的。 "大きく期待しなかったです。"

イ・セドル-AlphaGo後、人工知能に対する関心が非常に高くなった日本は囲碁プログラム'ゼン(zen)'を国家的次元で支援しているがイ・セドルと対局する当時のAlphaGoの実力に近接したという話が聞こえることも。


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▲三星火災杯が開かれる所は国家代表チームの研究室になって現地訓練キャンプとなる。 

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▲国家代表常備軍選手たちが実戦対局で夜間訓練をしている姿。 

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▲その反対側では三星火災杯の時ならば間違いなく行われるビバ国際囲碁道場vs囲碁記者団の'定期交流戦'が開催された。

 
原文記事:HANGAME