サイバーオロ

優勝よりも価値のある'さっぱりした'勝利

第8回応氏杯開幕~8強戦観戦評

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▲前期大会優勝カップを争ったパク・ジョンファン(左側)とパン・ティンウィ9段が第8回応氏杯開幕式で並んで抽選番号を持ってポーズを取った。 8強まで行った結果、前期準優勝者であるパク・ジョンファン9段は難敵コ・ジェを破って準決勝戦に進出し、前期優勝者パン・ティンウィ9段は16強シードを受けて出場したが最初の対局でス・ウェ9段に負けて1勝もおさめることができずに脱落した。

常昊、チェ・チョルハン9段がそうしたように前大会準優勝者が次期大会を席巻する前例を再び見るのか。 優勝高地を目の前に置いたパク・ジョンファンにとって応氏杯は強力な自身の時代を開く事ができるか、でなければいつの間にか消えるかを判断する重要な岐路なのでさらに注目される。

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[キム・グラの舌戦説戦-第29回] 
'盤上のグラ'キム・ソンリョン9段.強大な口が立つことを自慢して得たニックネームだが派手なアドリブでも、取るに足らない雑談でも付け加える水準ではない。ステレオタイプの解説とは距離が遠い、率直溌剌直線的な語法でファンたちを楽しませる。毎週サイバーオロが蓆を敷く。週間観戦評'キム・グラの舌戦説戦'.

今回は先週を熱くさせた第8回応氏杯観戦評だ。




久しぶりにさっぱりしたと言おうか。 パク・ジョンファン9段の勝戦ニュースは世界大会優勝以上に聞こえてきた。 
また、AlphaGo以後さらに強くなっただけのようなイ・セドル。 6月に最高の対決を期待する事ができるようになった。去る1週間の応氏杯に対して話してみる。 
 

#1.応氏杯開始はこうだった。 

中学校1学年、まだ研究生だった1989年のある日。 貫鉄洞(クァンチョルドン)の韓国棋院はそれこそ足の踏み場がなかった。 この日はチョ・フンヒョン9段の応氏杯決勝5局公開解説があった日だ。

当時韓国棋院は5階にある大会場が最も広い場所であった。 ここで今は故人になられたキム・スヨン先生が解説をした。 どれくらい感激したのか建物全体に朗々と鳴り響いた声がまだ記憶に残っている。 

1回大会は16強戦で繰り広げられた。 この時日本は国家シードを何と5人も受けた。 
台湾代表として出場した林海峰、王立誠、王銘琬。 ここにアメリカ代表マイケル・レドモンドと韓国代表で出場した趙治勲まで実際皆日本棋院所属棋士だったので日本選手たちだけで何と10人が出てきた。 中国は5人。 韓国棋士はチョ・フンヒョン9段たった1人。 

韓国の囲碁の実力が私たちもよく分からなかった時なので(この時まで世界大会がなかったので比べるほどのデータがなかったので当然だった)国家シードをチョ・フンヒョンだけ受けたのだがまともに抗議できなかった事を考えれば応氏杯初代優勝がどれくらい感激だったのか当時を経験した囲碁人やファンたちならば知ることが出来るだろう。

応氏杯はこのように韓国にとって縁深い大会だ。 韓国囲碁全盛期を開いた出発点でもあるし。

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▲誇らしい応氏杯優勝者。 見よ、どこの国の優勝者が最も多いのか。 世界大会ができた以後応氏杯の優勝系譜がまもなく世界囲碁界を号令した流れだった。



4月20日。 第8回応氏杯は人数を大幅に増やして30人で始めた。 去る20年間韓国のチョ・フンヒョン、ソ・ポンス、ユ・チャンヒョク、イ・チャンホ、チェ・チョルハンがおさめた優勝成果が国家シードをどのように変えたのか確かに知らせる。

主催側国家が人数をたくさん持っていくのは仕方ない。 なのであえて中国棋士と比較したくはない。 今回の大会で韓国は国家シード6人に前期準優勝者であるパク・ジョンファンまで合計7人を受けた。

日本は6人だ。 そのうち張栩と蘇耀国を抜くならば事実上4人。 30年もならない時間で私たちと日本の立場がどれくらい変わったかを実感させた。 

応氏杯28強戦が行われた日、井山裕太は日本棋院で行われた第54期十段戦挑戦五番勝負第4局でタイトル保有者の伊田篤史8段に163手で中押し勝ちして総合成績3-1で優勝した。 日本にあるすべての棋戦を占めたことではないが伝統の7大棋戦を優勝した最初の棋士になった。

応氏杯が誕生する前、日本囲碁界の雰囲気だったらイ・セドル9段がAlphaGoと対決して4局で初勝利をおさめた日ぐらい揺れたのかもしれない。 

3年前、後輩らとこういう話をしたことがある。 井山裕太が韓国にくれば果たしてランキング何位ぐらいになるだろうか。 意外にも(!) 上位圏に選んだ者が多かった。 理由は一つだ。
 
日本の棋士の水準は低いが井山裕太は違うということ。 いくら水準が低くてもそれほど圧倒的な記録を見せるということはレベルが高いという意味だ。

同じ時間中国上海で日本は6人の選手のうち2人だけが16強に進出した。 アメリカのエリック・ルイに勝利した羽根直樹が対戦が良かった点を勘案するならば実際には河野臨だけがチェン・ヤオイェに勝って孤軍奮闘した。

日本の囲碁ファンたちはこのような状況を果たしてどのように理解しているだろうか。 単騎匹馬に出て行って16vs1で戦ったチョ・フンヒョン9段の姿を見て学んでほしいと話さないだろうか。 
 
日本ランキング1、2位が世界大会に出場しないで国内タイトル競争に熱を上げて戦ってどのように何か大きい期待をする事ができるという話なのか。 (考えてみれば今私たちが日本を心配する時ではない。)

 

#2.パク・ジョンファン 

2013年3月。 パク・ジョンファンは第7回応氏杯決勝でパン・ティンウィに負けた。 当時応氏杯決勝日程は農心杯と続いていた。 宿舎は同じで場所だけ200m違いが生じる所。 農心杯主将として上海グランドホテルで韓国チームを優勝に導いてパク・ジョンファン時代が開かれたものとばかり思った囲碁界は大きい衝撃を受けた。

中国の新鋭が世界大会優勝をするほど成長した事に驚いて、パク・ジョンファンだけを信じて対策をたてなかった韓国棋院は一歩遅れて国家代表体制を作った。

今回前期優勝者パン・ティンウィはス・ウェに16強で負けた。 パク・ジョンファンの16強相手はホァン・ウィンスン7段(97年生まれ)。 第2回グロービス杯新鋭世界大会優勝者だ。 中国女流代表チーム監督ワン・レイ8段がコ・ジェ以後有望な棋士として取り上げ論じた逸材だ。
 

▼ <シーン1 /> (黒)ホァン・ウィンスン7段- (白)パク・ジョンファン9段
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黒1ホァン・ウィンスンのツケにパク・ジョンファンが白2で割り込む手を見よ。 
このような逆襲を誰が想像できただろうか。 
 

▼ <シーン2 /> 分かりながらも打たなければならない心情
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<シーン2 /> 
一本道の手順といわなければならないのか。 だが分かりながらも打たなければならないホァン・ウィンスンの心情はどうだろうか。 それこそ幻想的なフリカワリ。 うすかった白があっという間に厚くなった。 完勝を導いた一手上手だった。 

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▲コ・ジェが大勢だがまだそのような話をするには早い。 ここでパク・ジョンファンを締め出す前に早くさく烈したシャンパンに過ぎない。
 

棋譜再生


 

パク・ジョンファンの8強相手はコ・ジェ。 あえてコ・ジェに対する説明はしなくても済むだろう。 サイバーオロで‘グッバイ コ・ジェ!’というタイトルを付けるほど世界が公認する最強者だ。



事実上決勝といっても異論がないほど関心を集めた一戦だった。 8強戦だったが、韓中戦の争覇で今後4強と決勝の行方を計るようにするほどのひと勝負だった。 

囲碁の流れはこうだ。 序盤パク・ジョンファン優勢。 ずっと流れは良かった。 ところが事件が起こった。 

▼ <シーン3 /> (黒)コ・ジェ9段- (白)パク・ジョンファン9段
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<シーン3 />
パク・ジョンファンは白1で打ってコウで勝負を決定しようとした。 ところがコ・ジェがコウにしなかった。 引き続きコウ材を作成したがコウを決行できないで悪手だけいっぱい打った格好。 時間もとてもたくさん使った。 逆転された瞬間だ。 
 

このように負けるのか。 解説をする時(そばで囲碁を見守る時その時まで)完ぺきに見えるパク・ジョンファンに負担感という言葉を級み入れて合わせれば必ず変に負ける瞬間が訪ねてくる。

今がちょうどそんなことではないかと不吉だった。 ところが状況が妙に流れた。 パク・ジョンファンは時間がなくて罰点を受ける瞬間になり、コ・ジェはそのようなパク・ジョンファンを相手に時間の圧迫を与えようとコウを作るヨセを打った。 

▼ <シーン4 /> コウには勝ったが囲碁は負けた
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<シーン4 />
コ・ジェが黒1で中央側白が2で打ったところへ向かったとすればパク・ジョンファンは負けた。 ところが相手が罰点に入るとすぐに調子にのったコ・ジェは黒1に打って白が受け入れるように願った。 ところがパク・ジョンファンは白2で勝負をかけた。

以後コウになるのは絶対。 問題は時間が多いコ・ジェが時間のないパク・ジョンファンより正確な判断をせずに流れだけで打ったという点。

コウではコ・ジェが勝ったが囲碁には負けた。

どれくらいあきれる敗北にあったのかは終わった後コ・ジェの表情を見れば知ることが出来る。 罰点2点含む、パク・ジョンファンの1点勝ち。 ぴりっとした。

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▲茫然自失、コ・ジェ。


棋譜再生




#3.イ・セドル

超一流のうち応氏杯と最も縁がない棋士がまさにイ・セドルだ。 決勝に上がったこともない。 4回連続出場が無意味なことだ。 AlphaGoとの対決が囲碁に対する新しい転機を作ったきっかけになったことではないだろうか。

AlphaGo対決以後ひとまず対局数は多くないが一度も敗れたことがない。 内容も立派だ。 8強でカン・ドンユンに勝って4強に上った。 カン・ドンユンは最近国内棋士のうちには最高のコンディションを見せていた。 

序盤イ・セドルはAlphaGo定石を持ち出した。 そして中盤接戦で成功した以後完ぺきに終えた。 兄弟対決だと見ると大きい関心を持たなかった対決だった。 それよりもイ・セドルの囲碁のうち最も光った一手は16強戦から出た。 

▼ <シーン5 /> (黒)リン・リーシャン6段- (白)イ・セドル9段
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<シーン5 />
16強戦相手はナ・ヒョンに勝った台湾のリン・リーシャンだ。
イ・セドルの白1の低空飛行。 この一手を感じてみよ。 
見て、また見ても驚くべきだ。 そんなところに手があるとは。 

 

▼ <シーン6 /> 格が違う
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<シーン6 />
以後進行を見れば黒は足踏みの連続だ。 
白は10、12で黒一子を制圧して一手を儲けた。 
 
イ・セドルに一手破られて勝つ棋士が世の中のどこにいるだろうか。 リン・リーシャンはこの時悟ったかもしれない。 レベルが違うことを。 


棋譜再生
 

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▲兄弟対決を行ったイ・セドルは8強戦でカン・ドンユンに黒5点勝ちして応氏杯で二回目の準決勝に上がった。 今回は応氏杯優勝に届くだろうか。
 

韓-中戦成績7勝1敗。 韓国選手たちはすごい姿を見せた。 AlphaGo大戦ぐらい楽しい一週であった。 

応氏杯4強戦は6月10~14日に再び繰り広げられる。 イ・セドルvsパク・ジョンファン。 国内大会決勝戦で会う時とは比較にならない程緊張を感じさせる準決勝三番勝負。 時間がはやく過ぎ去ったら良いだろう。 韓国選手たち引き続きファイティングという話です! ^^
 
原文記事:サイバーオロ 

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