感情のないAlphaGoの前で…イ・セドルは'謙虚の手'を学んだ

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 ▲イ・セドル9段は20代の時期、過度に攻撃的棋風ではないかという質問を受けるとすぐに“戦うに値するから戦う。 手が見えるのだからどうしろというのか”と対応するほど自身満々だった。 そうしたイ・セドル9段がAlphaGoと対局をしながら謙虚な勝負師の容貌を見せた。


以下の記事は3月15日朝鮮ドットコムにイ・ホンリョル囲碁専門記者が報道した <感情のないAlphaGoの前で…イ・セドルは'謙虚の手'を学んだ>を移した文です。 ○● [朝鮮ドットコム]記事原文



[人間対人工知能頭脳戦争]人工知能と対局して変わった反抗児

世界を席巻した10・20代の時は'毒舌家' "不利で適当に打ったが勝った"
AlphaGo対決直前"私の勝利は不変" 
3連敗の後には"イ・セドルが負けただけで人間が機械に負けた事ではないです" 
自信→当惑→絶望→反転まで…対局繰り返して円熟した勝負師
 

去る1月第2回夢百合杯決勝を控えてイ・セドル(33)は19才の中国棋士柯潔に侮辱を受けた。 コ・ジェが"イ・セドルが優勝する確率は5%に過ぎない。 伝説の時代は過ぎた"と傍若無人の発言をさく烈させた。



言葉より実力で見せるという決意も虚しくイ・セドルは世界3冠王コ・ジェに敗北、準優勝に終わった。 二月程すぎてイ・セドルは当時機嫌を損ねたのではないかという質問を受けてこのように答えた。

"自信に充ちた子供が自信があふれてそのように話したことでしょう。 全て理解します。"

もしかしたら自身の幼い時期を思い出したことではないか。 幼い時期のイ・セドルはコ・ジェに劣らない毒舌家であった。

勝負師イ・セドルが進化している。 囲碁技術に対する話ではない。 思慮深くて用心深い30代の姿を備えていきつつあるという意味だ。 自由奔放だった幼い時期の血気が相当部分消えた感じだ。 10代と20代の時期、彼は胸の内を思いつくままによどみなく吐き出して物議に上がったりした。

人工知能プログラム AlphaGoと広げている五番勝負がその分岐点の役割をしている。 予想とは別に序盤3局を連敗してイ・セドルの自尊心は傷つくだけ傷ついた。 皆がイ・セドルの完勝を予想した所なので衝撃はもっと大きかった。

全世界が"人間が機械に従属される信号弾"としながら沸き立つ時、彼はこのように話した。 "イ・セドルが負けただけで人間が機械に負けたことではないです。"他の上手が出たならば勝つこともできたという真意を抱いている。


翌日4局で貴重な1勝を取り出したイ・セドルに向かってある記者がこのような質問を投げた。 "AlphaGoがイ・セドル9段の棋譜を思う存分研究する事と違いイ・セドル9段はAlphaGoの棋譜をきわめて制限的な報告だけで出場した。 情報の非対称問題をどう思うか。"
彼はここで全く過去のイ・セドルにふさわしくない返事をした。 "大きな問題とは見ない。 基本的に私の実力不足のせいだ。"



今回のAlphaGoとの対決シリーズでイ・セドルが見せた発言サイクルは自信→当惑→現実認定→絶望→反転成功→謙譲のコースにつながってきている。 2月22日1次会見の時、彼は"意味深い対局に私が出ることになり光栄"としながら"人工知能が相当な水準に上がったとしても少なくとも今回は私に勝つことができないだろう"と話した。

五番勝負突入直前である3月8日の開幕会見の時も彼は"ひょっとして完封できない事があったとしても私の勝利は不変"といった。




イ・セドル語録整理
 
実戦モードに入り込んで状況は予想外に流れていった。 連敗が度重なる間イ・セドルの所感を集めてみるとこのようになる。

"人が考えるのが難しい勝負の賭けをして驚いた"(9日1局敗北後)

"序盤から一度も先んじたことがなかった。 AlphaGoの完勝だ"(10日2局敗北後)

彼は12日3局でも敗れて3連敗を記録した後には"無力な姿を見せて申し訳ない。 深刻な圧迫感、負担感に耐えることができなかった"として罪人のように頭を下げた。


過去のイ・セドルだったらそのような姿を見せただろうか。 10・20代頃の彼は囲碁界では見られない反抗児であった。

昇段大会および囲碁リーグに参加せず支障を与えるかと思えば、最上級棋士としては類例がない6ヶ月間の休職で混乱を招いた。

囲碁界の大小の事件の中心にはほとんどいつもイ・セドルがいた。 舌禍や問題語録も彼を付いて回った。 不条理に対する勇気ある反抗という肯定評価もあったが行き過ぎた自分誇示という批判もあった。

やわらかくて謙虚になったイ・セドルの変身を単純に積もっていく年齢だけで説明する事はできない。 今年の初めコ・ジェの挑発の時から忍耐力を見せ始めたイ・セドルの言動は3月AlphaGoとの対決をきっかけにより一層円熟した。

感情のない機械との対決を通じて謙虚と忍耐を習ったわけだ。 人工知能が"まだ機械には負けることはできない"という自尊心が強い人間スターの1人を円熟した勝負師に変身させた。
 
原文記事:感情のないAlphaGoの前で…イ・セドルは'謙虚の手'を学んだ