第一人者‘センドル(強い石)’、なぜ三十才で引退してアメリカへ行こうとするのか

イ・セドル“華麗な時に離れたい”......深い孤独も共ににじみ出て
 
イセドル
 
▲センドル(強い石)、イ・セドルが人生をかけた勝負の賭けに出た。 囲碁のグローバル化のために3年以内にアメリカ進出を計画している。 頂上にいる時に新しい囲碁世界を夢見るイ・セドル9段が4日、上往十里(サンワンシムリ)の辛味鍋(メウンタン)店で酒杯を傾けてインタビューを受けている。 [出処|京郷新聞]


“離れ屋の老人として消えうせて行きはしないです。”

‘センドル(強い石)’イ・セドル9段(30)は奇奇怪怪な手に相手の虚を突くのが上手だ。 深い読みから出る妙手だ。 そのようなイ9段が今度は囲碁人生をかけて超強気を置いた。 囲碁不毛地帯開拓だ。

囲碁を世界に普及させようとする努力は今でも少なくない棋士がすることだ。 だが、たいてい勝負の世界でこれ以上持ちこたえる事ができなくて一種の糊口之策(死なずに生きていけるようにようやく 食べて生きていくことができる方法)として出た囲碁グローバル化が大部分だった。

イ9段の囲碁グローバル化は違う。 彼は現存の世界第一人者だ。 さらに今後4~5年は最上でやすやすと耐え忍ぶことができる、自他が公認する絶対強者だ。 そのような彼が3年以内に‘無条件’海外進出を宣言した。 人生の勝負の賭けに出たイ・セドルに会って酒を一杯飲んだ。



■イ・セドル“華麗な時に離れたい”
3年以内無条件進出“囲碁グローバル化”

■“アメリカ、華僑通じて囲碁知られて利点…
カナダ早期留学の娘もしばしば見て”

■ “私が京郷新聞に特ダネを差し上げます
ヘビースモーカーだが、今日以後禁煙します”


李世石
▲ 2012年11月13日、チェ・チョルハンに勝って国内最大棋戦olleh杯を3年連続優勝した。 厳しい勝負師イ・セドル9段は実際は‘娘バカ’だ。 囲碁界で噂になったヘビースモーカーであるイ9段だが娘を愛する心でタバコまで切ることにした。

 

■イ・セドルが夢見る明日

去る4日夜、イ9段をソウル、上往十里(サンワンシムリ)韓国棋院近隣の辛味鍋(メウンタン)店で会った。 たびたび‘引退’を流す内心が気になって、すっきりさせたいために聞きたかったからだ。 囲碁で読みが深いだけに世の中を生きていく世渡りにも格別な布石を敷いているだろうと考えた。

しかし返事は意外に水っぽかった。 “華麗な時に離れなくてはね。”

口の中に一杯目の焼酎を含んだ彼は特有のカラカラした声で“今後数年間は今のように勝負できるでしょう。 だが、その後には何をするでしょう? 自分の意志のとおり勝負できないならばそれ以上は勝負師ではありません”として再び焼酎の杯をたしなんだ。

囲碁勝負を離れてイ・セドルは自身が最も上手にできることとして囲碁普及を挙げた。 世界最強者である自身が出ればいくら囲碁不毛地帯でも反応が違わないかという計算が敷かれた手だ。 彼は“チェスが享受するほどの人気を得られるようにしてみたい”という具体的な抱負も伝えた。

最近自身が共同企画・開発者に出て‘go9dan.com’という囲碁専門サイトをオープンしたのも海外進出のための布石といった。 法人は香港に置いてアメリカ サーバーで運営されるこのサイトは‘英語圏囲碁普及’に焦点を合わせた。 だが、彼が袖をまくりあげて出るとすぐに最近イ9段をはじめ、イ・チャンホ、パク・ヨンフン、キム・ジソク、パク・ジョンファンと孔杰、謝赫、陳耀燁、時越、范廷鈺など韓・中最強グループ間のビッグバンが広がっている。 ひとまず世界囲碁界の耳目を集中させるほどの‘考え’は打った。 

イ9段は昨年賞金で7億ウォン以上儲けた。 去年も8億ウォン近い賞金を握りしめた。 彼が行うひと勝負は勝敗を離れて約700万ウォンの価値がある。 プロ野球イ・スンヨプの昨年年俸が8億ウォンなので、イ9段の収入は現在の韓国スポーツ界でトップクラスに属する。 さらに全盛期が過ぎたという声を聞くイ・チャンホ9段も毎年2億~3億ウォンの賞金を取りまとめていてイ・セドル9段もやはり韓国で持ちこたえれば10年の間はその程度の賞金は稼ぐことができる。

これを考えれば海外での足回しが容易でない。 囲碁サイトで金を稼ぐことは遥か彼方のことで、海外で活動して国内棋戦や国際棋戦に出場するのも大変なためだ。 海外進出後公式収入は‘ゼロ’になるのが常で、マイナスにならなければ幸いだ。

だが、彼は“私がお金だけを考えたら中国行きを選択したでしょう。 最近中国囲碁ブームが途方もなくてそちらに進出しようという誘惑もたくさん受けます。 しかし‘大韓民国イ・セドル’が中国に行くことはできません”と言って囲碁をグローバル化することでやりがいを探すといった。

海外進出後にも道があれば世界大会に参加するだろうが、熱心に探しはしないとして‘国内プロ引退’に近い宣言をした。

そのような覚悟の中に選んだ普及地がアメリカだ。 ここにはアメリカ政府や米国民の中国に対する関心がますます大きくなることで、中国を代表する文化の中の一つである囲碁に対して米国社会も視線を転じるという彼だけの‘深い読み’が敷かれている。 華僑を通じてある程度囲碁が普及しているとのことも理由だ。 


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▲ 2012年12月13日、三星火災杯決勝三番勝負最終局、世紀のライバル戦を広げたイ・セドル(左側)は優勝を喜びながらも淡々とした。 優勝の喜びと共にライバル古力との対局がどれくらい楽しかったのかを言った。 イ・セドルは気質的に勝負師だ。 勝負が思い通りにならない時、あえて勝負にこだわらないだろう。 新しい道を切り開こうとする。



■イ・セドルが眺める今日

だが、イ9段のアメリカ行きにはまた他の理由がある。 家族だ。

イ9段は一人暮らしの父だ。 昨年8月妻キム・ヒョンジンさんと娘ヘリムさん(6)がカナダに早期留学に上がった。 1年ほど行ってくる語学研修ではなく、短くても3~4年である長期留学だ。 イ9段の目にそのような娘がありありと浮かぶ。

“娘がカナダで勉強します。 ところがカナダには囲碁市場がなくて、市場が作られる可能性もないです。 だが、アメリカは十分にビジョンがあります。 また、アメリカにいればいつでも娘を見に行くこともできて。 それでアメリカ行きを考えましたよ。”

酒が何度か回ったがそれほど笑いを作らなかった彼が娘の話をするとすぐに口が耳にかかる‘バカ’になった。 

目に入れても痛くない娘、それで禁煙まで宣言した。

京郷新聞記者と一杯ひっかけた翌々日である6日、娘を見にカナダ行き飛行機に上がったイ9段はその前日タバコをやめた。

イ9段は囲碁界でものすごい‘ヘビースモーカー’として噂になった。 世界大会のような大きい勝負で、血を凍らせる手を読むことをしながらも時々突然建物の外に飛び出して一服吸ってこなければならないほどすごいヘビースモーカーであった。

普段“酒を飲めば頭が痛いが、タバコは悪いと考えたことがありません”という言葉を頻繁に使いながら暮らした。 昨年末三星火災杯決勝最終局で中国の古力9段に勝利した後すぐに吸ったタバコ味を‘100万ドルの味’といった彼であった。

そのような彼が“私が京郷新聞に特ダネを差し上げます。 今日以後禁煙します。 あさってカナダに行けば数日間ヘリムとともになければならないが、ヘリムがタバコの煙を嫌います。 ヘリムに隠れてタバコを吸いたくはありませんね”と禁煙を宣言して味よく酒一杯を引き寄せた。 

そのように酒の席が熟するとすぐに彼は韓国囲碁に向かった苦言もした。 特に‘創造力’を殺す囲碁道場の問題点を指摘した。

囲碁道場が‘商売’にだけぶらさがって見たら入段に汲々とするほかはなくて、それと共に幼い未来の卵が創造力や可能性などを生かすことができなくて道場の師匠にだけ似通っていっているという話であった。

“イ・チャンホ師範もそうだし私も同じことだが、以前には囲碁の無限の道を自分で悟るようにしました。 しかし最近の囲碁教育はあたかも入試試験のように詰め込み式の教育が主です。 そのような教育ではある程度は持ちこたえるだろうが世界最上で君臨できません。”

現実がこのように変わったところには親の誤りも大きいと話した。 子供たちがどのように成長しなければならないかは師範がよく分かるのだがこれを信じることができなくて急き立てる親のせいで成績にだけぶらさがるほかはないという話だ。

イ9段はプロの門の敷居をかなり低くしたことにも首を横に振った。 彼は今年の入段大会競争率が本戦だけおいてみれば10対1程度にしかならないとし入段がとても簡単になったと指摘した。

“幼稚園の時からあらゆる教育を受けて、数千万ウォンをつぎ込んで大学を卒業するまで死力をつくして勉強した人々がちょっと名前が知れている企業に入るには数百対1の競争に勝ち抜かなければなりません。 だが、今の囲碁は誰でも持ちこたえればプロになります。 近い将来‘30代初段’も出てくるでしょう。 司法試験に比喩された入段競争がもう昔話です。 これでは中国を克服できませんね。”

囲碁プロ棋士になる事がかなりの会社に入るより簡単なのが最近の入段制度について彼は焼酎一杯を口に注ぎ込んでは眉間のシワを狭めた。

韓国囲碁の希望も話した。 自身を繋ぐほどの後輩としてはキム・ジソク8段を最初の指に挙げた。 現在のキム8段はあまりにも熱いのが傷で、緩急調節にもう少し気を遣えばまもなく世界を号令するものと展望した。 自身が25才を越して全盛期を開いたようにキム・ジソクも25才になる来年以後ならばより一層成熟した棋譜を残すことになることという‘占い師’のような予測をした。

シン・ジンソ、シン・ミンジュン、ビョン・サンイルのような囲碁英才に対する期待もやはり少なくなかった。 ただし先輩たちの囲碁をそのまま従わずに自分だけの色を示すべきだと助言した。

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▲ 2011年12月28日囲碁大賞授賞式場で娘ヘリムさんと共に、右側は授賞を引き受けた韓国棋院ホ・ドンス理事長、イ・セドルがタバコをやめると宣言したことはひたすら'娘がタバコを嫌うため'だ。



■イ・セドルが過ぎた昨日

ズワイガニ三匹を捉えて鍋の底が出てきて、ある程度酒も飲んだうえに聞きたかった話まで明快に聞いて席を立ち上がった。 しかしイ9段は何か不足した表情であった。 ‘ここでやめ…’という言葉を言おうとしたが、“もう一杯”を先に叫んだ。

メウンタン店の近隣ビヤホールに移した席では少し前のかたい話とは違い‘人の匂い’が充満する話があふれた。

先に酒話が出た。 イ9段は酒が好きだ。 座った席で焼酎7~8本を空けることもあった。 後輩の“先輩、一杯?”には“OK!”だ。 中国棋士孔傑9段とは酒を飲んで‘卒倒’事件もあった。

2011年12月、北京で広がったスポーツアコード大会が終わった後、古力9段の招待を受けた。 その場には酒に弱い孔傑9段と酒に強い彼の夫人も共にした。 古力、孔傑9段婦人と先に始めた酒の席に孔傑9段が合流して酒宴が大きくなり、終いには孔傑9段とイ9段が共に飲み比べをしたという。 孔傑夫婦の合同攻撃にイ9段は崩れ、最後の勝者は‘大陸最高の酒飲み’古力9段になったとのことが卒倒事件の顛末だ.

イ9段は古力9段とたびたび酒を飲むといった。 酒類は高粱酒とビール. 高粱酒だけだと持ちこたえられるのだが、ビールが付け加えられれば古力に対抗できないといった。 ビールに関する限り囲碁界で古力9段を越える‘上手’がいないというのがイ9段耳打ちだ。

韓国棋士のうちには引退したキム・ヒジュン師範を最高の‘酒商売’として挙げた。 優勝賞金をその日のうちに酒を飲む事に全て使って、中国の最高酒を爆弾酒としてなぎ倒した伝説のような話が囲碁界に伝えられているといった。 “そのようなキム師範をこの前尋ねたが、以前にはおよばない酒量を見て胸が痛くなりましたよ”と近況を聞かせることもした。 

イ9段の趣味の中の一つであるビリヤードの話も出てきた。 世界第一人者席を守るには他のところに視線を移す時間がないという言葉に彼は手で遮って“私もそうですがプロ棋士皆よく遊びます。 ビリヤードもしてポーカーや花札もして、他の人と同じです”といった。 自身は150程度打つという彼はプロ囲碁界最高のビリヤード高手にイ・ジェウン7段を挙げた。 500以上の上手だ。

彼は勝負師らしくすべてに戦い屋らしい気質を見せた。 麻雀のように互いの顔色を見て頭を使うゲームより‘ソッタ’や‘トリジッコテン’(※訳注:2つとも花札)のようにベッティングをしてすぐに勝負をするゲームを楽しむといった。

 

これまで行った数多くの勝負で最も記憶に残る対局では昨年三星火災杯32強戦から出た古力9段との‘4コウ’勝負だと話した。 だが、韓国に知らされたことと違い彼は自身が有利だった囲碁でなく、勝負をするか引くかを決める刀の柄は古力9段が握っていたと話した。

それと共に今まで行った勝負では‘名局’として呼ぶほどの対局がなくて棋譜を残すことが希望だと付け加えた。 自身に少しのミスがなく、相手も最善を尽くしたが半目で交錯した勝敗. それを名局の基準とした。 相手はもやはり古力9段ならば良いと話した。

話だけ多かった古力9段との‘世紀の十番勝負’に対してはファイトマネーだけみたされるならばいつでも出る意向があると話した。 満足するほどの対局料は‘勝者一人占め15億ウォン’だ。 誰でも負けると囲碁界を離れなければならないほど致命傷を受けるだけにその程度はあってこそ勝負に出ることができるといった。 自身に聞こえる苦言と関連しても一言いった。

“私が幼い時、間違った事が多かったんですよ。 だが、もう多くの人々に上手にしようとします。 ただし正しくないことには自分の声を守ります。”
 

自身を調べてみたビヤホール女性従業員が差し出した紙にサインして、痛快にビールをがぶ飲みするイ9段の顔に世界第一人者のカリスマはなかった。

それよりは血がにじむ勝負と骨を削る敗北の痛みまで一人で飲み込まなければならない、それで誰かと飲むビール一杯をそのように美味しくする、深い孤独だということがにじみ出た。 そうして酒の席は深くなっていった。

[文|京郷新聞、オム・ミニョン記者marguel@kyunghyang.com]
原文記事:第一人者‘センドル(強い石)’、なぜ三十才で引退して米国へ行こうとするのか 

※2016/01/18翻訳修正



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