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[潜望鏡]パク・ジョンサン日記/イ・セドル-AlphaGo対決の開幕前開幕後(下)

 

■パク・ジョンサンプロが伝えるイ・セドル-AlphaGo対決の裏面

先週本サイトに掲載して話題を集めた <パク・ジョンサン日記/イ・セドル-AlphaGo対決の開幕前開幕後> の'後編'をのせます。 この文はイ・セドル9段の親しい後輩で対決が開かれる間、時には近距離で共にして、時には生放送解説者として勝負の現場を見守ったパク・ジョンサン9段がハンゲーム囲碁に送ってきたものです。

ここまで接する事ができなかった興味深い話とともに深い感動を伝えてくれた世紀の対決を反芻してみてください。 また、読まれる方々の理解を助けて差し上げるために棋譜は編集者が挿入したことを明らかにします。[編集者 注]

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真に素晴らしい勝負であった。 世界大会決勝のような数多くの名勝負を現場で感じて、今まで数万対局の棋譜を検討してみたが今回のように胸が熱くなる囲碁は初めてだった。 雄壮で、悲壮で、激烈だったが美しかった。

2局のイ・セドル9段が敗れた日、彼の部屋で朝まで復碁と話を交わした。 眠たい目をこすってホテルを出る時3連勝で逆転すれば今回の勝負に対してそばで見守った事により文を書こうと決心したが、3局を敗れることによってその考えをひっこめた。 そして1勝4敗で世紀の対決は幕を下ろした。

その後10日以上時間が流れたが、まだ余韻が残っている。 冷たくて重たく勝つ道を歩いていったAlphaGoの手法。 そして燃え上がる心臓を破って時には冷静で時にはすさまじく勝つ道を探していた勝負師イ・セドルの姿。

囲碁は積み重ねているのだが文章を書くことはぎこちない、だが歴史の1ページを飾った大勝負を近くで見守った人として激しかった勝負の裏面を伝えようと思う。

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▲ KBS解説委員がパク・ジョンサン9段がKBS TVに出演してイ・セドル-AlphaGo対局を説明している。[放送画面キャプチャー]


"ただひとりの他には敗北意識にぬれていた"

世紀の対決第3局が終わった後、中国の第一人者コ・ジェは'イ・セドルの15手目が敗着!'と断言し、イ・セドル9段もやはり序盤21手目にはハネて受けなければならなく、その後では機会がなかったと話した。

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<第3局> 中国のコ・ジェは実戦15手目に過ぎない黒4を敗着だと指摘した。

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<第3局> 一方イ・セドルはAにハネなかった黒6(実戦21)が問題であったとし、その後には機会がなかったと吐露した。


世界最上の棋士が序盤以後ではチャンスがなかったと話すのは他の見方をすれば相当な屈辱だ。 加減なしでありのまま受け入れるのはイ・セドル9段の気質なのだが、人工知能に対しても違わなかった。 

その日見せたAlphaGoの手法はひどいように見えるほど完ぺきで、事実上勝負は112手で終わった。 これ以上機会がないということを誰よりもよく知っているイ・セドル9段が176手まで持ちこたえる姿を見て、放送中継をする終始心が複雑だった。 

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<第3局> 左上白大石が1(実戦112)の時点では事実上勝負が出た。 その後黒4で付けて行った手には凄まじさが滲んでいる。
 

今日の敗北は今回のAlphaGoとの対決全体の敗北を意味するのだが…。 さらに5000年の歴史の囲碁が人工知能に敗れることを意味するのだが…。

放送を終えて足の力が抜けて放送局の前で2時間程そのまま座っていた。 残った二対局に勝っても今回のシリーズの敗北は変わらず、プロ棋士に5番勝負で2勝3敗はそのまま3敗と違わないということだ。 私を含んだすべてのプロ棋士らと囲碁界は敗北意識にぬれていた。 

ただひとり、イ・セドル9段を除いての話だ。 3局を敗れた彼は淡々と4局を準備していた。 

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現在の囲碁はスポーツだ。 だが、イ・セドル9段や私が幼い時囲碁を習った時期には'芸術'と'道'の概念があった。 今回のAlphaGoとの勝負はスポーツの観点で見れば3局を敗れることによって勝負は決定されて、100万ドルの賞金も飛んで行った。 

だが、ひと勝負の囲碁を芸術作品として見るならば4局と5局の作品が残っているということだ。 最高の芸術家AlphaGoと素敵な作品を作り出すためにイ・セドル9段は苦心して、また、苦心した。

'セドル先輩は強靭だから立ち上がるでしょう!'3局が終わった日、足の力が抜けた一人の情けない後輩が最高の勝負師の妻とやり取りしたメッセージの最後の文面だ。 いったい誰が誰を心配したことか…。
 

"囲碁はひと勝負ひと勝負が作品であるから"

3月13日。 3局が終わった次の日4局が開始された。 黒番の場合、48%の勝つ確率で始めるAlphaGoは4局でも23手目で奇想天外な感覚を披露した。 

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<第4局> 黒1(実戦23)はAlphaGoの奇想天外な感覚だ。
 

AlphaGoの51手も良い判断で、1979年日本棋聖戦4局で'怪物'藤沢秀行先生が打った37手を連想させた。 歴代国手と名人が皆AlphaGoの中に潜んでいるようで体中に戦慄が流れた。 

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<第4局> 黒5(実戦51)が良い感覚。
 

だが、イ・セドル9段の対処も揺れることがなかった。 1寸の誤差もなしに黙黙と自身の道を歩いていって立派にバランスを合わせて、作品を描いていっていた。 

そのような渦中にAlphaGoの69手目が登場した。 しばらく後にイ・セドル9段に聞いたが、その手を見て安堵のため息を吐いたという。 本人は今の状況が不利ではないと見たが、AlphaGoはどのように形勢を見ているかわからない状況でその手を見て形勢判断が正確に一致する事を感じたといった。 

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<第4局> イ・セドルは黒の手(実戦69)を見て安堵のため息を吐いたといった。 AlphaGoの形勢判断が自身と一致すると感じたためだ。
 

局面はますます複雑になって中央で一発勝負に流れていた。 その渦中に盤上に打たれたイ・セドルの78手! グーグル側が明らかにしたようにその多くの変化で白がその場所に打ってくる確率をAlphaGoは10000分の1で予測していて、その意外性がAlphaGoに大きいダメージを与えた。 AlphaGoは慌てて地団駄を踏み、4局は人間の勝利で終わった。

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<第4局> 白1! '神の一手'と表現されたことがある。 AlphaGoは相手がこの場所に打ってくる確率を10000分の1で予測していて、その意外性に大きく揺れた。
 

イ・セドル9段は記者会見場で明るく笑った。 2003年当代最強の棋士イ・チャンホ9段を世界大会決勝で越える時も、2年前ライバル古力との十番勝負を勝利で飾る時も見せられなかったその微笑を今回のシリーズの勝敗に何の影響も与えることができない1勝で見せてくれた。

あまりにも正直なその微笑で勝利を渇望した勝負師の喜びを感じることができた。 もうたったひと勝負だけが残った。 記者会見場でイ・セドル9段はAlphaGoに52%を譲歩して黒で挑戦したいという意向を明らかにし、グーグル側が快く承諾して、二日後の5局をさらに期待させた。 
 

"電話がきた、このような布石構想をしようと"

3月14日。 最後の対局を控えた休息日だ。 夜11時のニュース出演以外に特別な日程がなかった私は家で次の日の放送を準備していたが、イ・セドル9段から電話が来て夕方に格別なことがなければ部屋にきて5局の布石構想を共にしようといった。 

中国で試合を終えて早く帰国したペク・ホンソク9段と共に夕方6時30分にホテル ロビーで会って部屋に上がった。 イ・セドル先輩とイ・セドル夫人は二日前が結婚10周年であったのだが、度々踏み込んで家族の時間を邪魔するようでなんだか申し訳なかった私たちは10周年記念ワインとホワイトデーをむかえてチョコレートをプレゼントした。  

食卓には花が飾られていたが結婚記念日を祝ってグーグル側がプレゼントしたものだった。



訪問の目的が明らかなのですぐに研究に突入したが二つの部屋が連結されたスイートルームの1ヶ所にはイ・セドル夫人とヘリムがいて、残りの1ヶ所で私たちは次の日に使う布石を構想した。 

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▲イ・セドル9段があどけない娘ヘリムの手を握って対局場に入っている。


"AlphaGoとの黒番布石はとても窮屈で。"イ・セドル9段が研究を始めて言った最初の言葉であった。 

まず二日前第3局の黒番布石を調べたが、序盤失敗の原因を分析する作業だった。 先んじた二回の黒番失敗を通じて下ろした結論はAlphaGoを相手に黒番の場合、攻撃を急ぐよりは丈夫で緻密に形態を構築しなければならないということだった。 

彼に合う布石を何種類か打って私たちは悩んだし、最終選択は1・3・5、小目・小目・シマリということだった。 1960年代から今まで粘り強く人間が愛用してきた布石で、そこで派生可能な色々な形態に対比をした。 夕食もルームサービスで解決して討論を繰り返し、結果は満足だった。 
 

"忘れられない勝負師の孤独を見た"

夜10時10分。 私とペク・ホンソク9段は部屋を出て光化門(クァンファムン)駅に歩いていって明日の勝負に対する話を交わした。 ホンソクと別れて11時のニュース出演のために汝矣島(ヨイド)に出発したが、KBSに到着して見ると洋服を検討した部屋に置いてきたことではないか。 

ニュースはブティック店の服を借りて解決したが、次の日の第5局生放送に着る服だったのでイ・セドル夫人に連絡をして少しの間お邪魔することにした。 

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11時50分頃ホテルに到着してあたふたと上がったところイ・セドル夫人が迎えてくださって'ヘリムのパパはまだ寝てないようだよ'と言って検討したその部屋に案内した。 

そしてドアを開けた瞬間! 灯が消えた薄暗い部屋で一人で碁盤を凝視して考えにふけっていたイ・セドル9段の姿があった。 孤独な勝負師のその姿は一生忘れられないようだ。 洋服を取りまとめて部屋を出る時見送りしていたイ・セドル9段の肩をポンとたたいて'よく休んで'と話したが彼は重い肩の荷物を後にしたままにっこり笑って挨拶の代わりにした。 

3月15日。 最終局が開かれた日だ。 午後1時に対局が始まるとすぐに研究された1・3・5の手がそのまま盤上に繰り広げられた。 前日の検討ではAlphaGoの8手目に反対側で突き上がってくることが気がかりだったが、ひとまず出発が良かった。 15手目まで私たちが予測したそのまま合致した。 

AlphaGoの16手目は世界舞台で数回登場したことがある手法だが18手目は囲碁歴史上初めて試みられる手であった。 序盤からお互いの勢いが衝突し、イ・セドル9段の丈夫な実利とAlphaGoの形対決だった。 

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<第5局> 事前研究した黒1・3・5布石。 15までも予想どおりの進行。 白18は囲碁歴史上初めて試みられた手であった。


囲碁が始まって1時間30分程流れた頃AlphaGoが68手目を打った時までだけでも形勢はイ・セドル9段が大丈夫だった。 そしてこの対局をあわせてイ・セドル9段が最も後悔をした69手目が打たれた。 

'囲碁十訣'というものがある。 碁を打つ十種類の教訓で約1000年前北宋時代の囲碁上手が作ったものだと知られている。 囲碁十訣の第二の口訣は'入界宜緩'であるが'敵陣に浸透する時はあまり深く入るな'という意味だ。 

 

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<第5局> イ・セドルは良い形勢で黒1(実戦69)で打った手を最も後悔した。 とても深かったということ。


イ・セドル9段の69手目はその格言を破る手であり、AlphaGoが大きく上書きして包囲してくるとすぐに局地戦ではかろうじて勝ったが大勢を失ってしまった。
 

"楽しんでいて、負けたと失望しなかった"

不利になったイ・セドル9段は秒読みの中でも107・109・169等の勝負の賭けに出て激烈に抵抗したがAlphaGoの冷静な仕上げに280手を最後にヨセ二つを残したまま降参を宣言した。 最後まで終えたとすれば2目半不足した形勢であった。

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<第5局> 勝負の賭け、黒1・3(実戦107・109)。 激烈な抵抗はAlphaGoの冷静な対応で明かりを見られなかった。


最後の対局が終わった後、色々な人々に囲まれて復碁をしているイ・セドル9段の姿を見ると明るく笑っている。 インタビューで明らかにしたように彼は勝負する瞬間毎を十分に楽しんでいて、真剣に最善を尽くしたが負けたと失望してはいない。 

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▲総五対局にかけた'世紀の対決'を終わらせたイ・セドル9段の周囲でホン・ソッヒョン韓国棋院総裁、チョ・フンヒョン9段をはじめとする同僚棋士が入った。


瞬間毎を楽しんでありのまま受け入れて、自身を発展させる人。 私が知っているイ・セドルはそのような人であり、容易ではない状況で最高の勝負を展開した彼に拍手を送る。

AlphaGoと繰り広げた5対局の作品は囲碁の水準を一歩前進させる事に大きい役割をすると期待されるが、信じられない技量を実現して出したグーグル側にイ・セドル9段と同じように敬意を表わして、最後に囲碁に向かって応援を送ってくださったすべての方に囲碁人として深い感謝を申し上げたい。 

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▲人々は'人間代表'で人が作った'機械'に対抗して闘魂を発揮したイ・セドル9段に熱い拍手で励ました。
 
原文記事:ハンゲーム - 楽しいコンマ、Goハンゲーム!