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イ・セドルvsAlphaGo秘話、無条件で勝つことだと思って再対局の契約はしなかった
 
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▲AlphaGoとの勝負で1-4で敗れたが人間の不屈の闘志を見せたイ・セドル9段。‘イ・セドルシンドローム’を作った。
 
 
対局がこのように大きくなるだろうと誰が推察できただろうか。
 
ここ一週間は囲碁で全国が揺れた。イ・セドル(33) 9段がGoogleディープマインドの人工知能AlphaGoを相手に五番勝負最後の対局を行った15日午後の話題は断然イ・セドルだった。

地上波放送3社が異例の同時生中継をして、総合編成、ケーブルまで加えれば何と10ヶ所の放送会社で囲碁を生中継した。 特に中後半接戦が繰り広げられた午後4時30分頃ネイバー中継同時接続者数は45万人を越えた。これ位になればワールドカップが羨ましくない囲碁熱気だ。

 
たとえ勝負は1勝4敗、イ・セドル9段の惜しい敗北で終わったが囲碁界は勝負以上のことを得た。イ・セドルvsAlphaGoの五番勝負勝負の前と後、そして隠れた秘話を整理した。
 
 
#イ・セドル、11億の代わりに100億以上得た
 
グーグルがイ・セドルに100万ドルをかけて五番勝負を提案した時、多くの囲碁界の人々はイ・セドルの途方もない幸運に驚いた。中国古力との十番勝負の勝利で10億を稼いだイ・セドルがグーグルが掲げた賞金10億をまた持っていくと考えた。‘古力(グー・リー)’と‘グーグル’。‘グー’という音節がイ・セドルに幸運をもたらしているように見えた。
 
イ・セドルも勝利を確信した。“当然私が5-0で勝つだろう。万一、私が一度でも負けるならばそれがニュースになるだろう”と自信を見せた。

 
だが、AlphaGoは予想とは違ってイ・セドルに3連敗という大きい衝撃を抱かせた。
 
“止めざるをえないのではないか。すでに勝負が決定されたが5局を全て打つのはむだなことだ。選手保護次元としても中断させなければならない”というイ・セドルを心配する声が大きくなった。

実際にイ・セドルは30年の棋士人生で最も大きいダメージを受けたように見えたし巨額の賞金も飛ばして衝撃が大きいように見えた。

しかしイ・セドルは切歯腐心して第4局で途方もない集中力と執念を発揮、AlphaGoに勝利をおさめてさすが‘人間代表’らしいという賛辞を得た。
 
囲碁界のある関係者は“イ・セドルの一方的な勝利を予想したが結果だけみればかえって3度をずっと負けてから勝利を取り出したのでさらにドラマチックな場面を作り出した。皆が5-0敗北を予想した時イ・セドルは起き上がりこぼしのように再び立ち上がる生命力を見せて、そこに人々の心が動いたようだ。”と話した。
 
イ・セドルが愛された理由はこれだけではない。彼は今回のAlphaGoとの正面対決で勝敗と関係なく人間的な姿を見せて、そこに人々が多くの感動を受けたためだ。特に対局が終わる時ごとに続いたインタビューは世間の話題になった。
 
衝撃の3連敗後イ・セドルは記者会見で率直な心情を打ち明けた。彼は“今までこのように激しい圧迫感と負担を感じたことはなかった”として“今日の敗北はイ・セドルが敗れたことであって、人間が負けたのではない”と話した。謙虚な彼の姿勢に国民皆が感動した。

 
今回のイ・セドルとAlphaGoの‘囲碁シンドローム’を金額で換算するのは無理があるが‘イ・セドルが10億を失って100億以上を得た’という事実であるようだ。

実際の広告系事情に明るい要人によれば“現時点でイ・セドル9段はCF界側から最も注目される人物であることは確実だ”としながら“近い将来イ・セドル9段に広告提案が雪崩れ現象で押し寄せるだろう”と見通した。 イ・セドルが最後まであきらめないで匠の精神を守った代価だ。
 
 
#最大の受恵者はグーグル
 
金持ち企業グーグルが囲碁に挑戦状を差し出した時、人々は‘グーグルが高い授業料を払って一手習うんだな’と考えた。それしか見方がなかった。如何に人工知能でも囲碁は難攻不落として考えられてきて、簡単に征服されるものとは見えなかった。
 
だが、事実その時、囲碁界は気を付ける必要があった。世界最高企業というグーグルが自分たちの最終ボス(エリック・シュミット)と共同創業者(セルゲイ・ブリン)まで韓国に呼び入れて試合を行う時それなりに準備ができていたという事実を。
 
蓋を開けた結果はすでに報道された通り人々の予想を跳び越えた。AlphaGoは途方もない実力で人間界最強者を困惑させて、見守る人達を当惑させた。
 
グーグルの研究はすぐに株価に反映された。去る14日放送されたMBC 'ドキュメンタリースペシャル-世紀の対決イ・セドルvsAlphaGo'ではイ・セドルとAlphaGoの対局期間の間急騰したグーグルの株価が公開された。
 
公開された表によればイ・セドルとAlphaGoの1局が進行された去る9日、713.53ドルであったグーグルの株価が2局が進行された12日には744.87ドルで4.39%上昇した。これは韓価10兆8700億ウォンに該当する金額で今回のイ・セドルとAlphaGoに対決に対する全世界の人々の関心を一目で現わす数値だ。
 
キム・デシク カイスト教授は“これからは知能を理解して大量生産が可能な会社が全世界を掌握するだろう。グーグルが人工知能の問題を解決する瞬間数百兆、数千兆を儲けることができる”として人工知能AlphaGoの価値を評価した。
 
言うまでもなく今回のチャレンジマッチの最大受恵者はグーグルであるわけだ。
 
 
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▲慌てた表情のプロ棋士。AlphaGoは囲碁界に途方もない衝撃波を投げた。
 
 
#AlphaGoの今後の対決計画は?
 
イ・セドル-AlphaGoの勝負がAlphaGoの勝利で終わって果たしてAlphaGoの次の相手は誰なのかに関心が集中している。イ・セドル9段も雪辱戦を望んでいて中国と日本も自分たちに機会が与えられればという表情だ。
 
授賞式が終わった後、記者とのインタビューでヤン・ジェホ韓国棋院事務総長は“今回の対決が予想通りになってはいないがイ・セドル9段が最後まで屈しない姿を見せて囲碁が国民に大きな愛を受けるきっかけになった。”と喜んだ。
 
彼はまた“1局でイ・セドル9段が負けるのを見ていっそ2勝2敗できっ抗した勝負を行って最終局でイ・セドル9段が勝ったらさらにドラマチックでなかっただろうか考えた”としながら“イ・セドルでも誰でもAlphaGoが韓国棋士ともう一度対決を行ったら良いですが今は容易ではないようだ。

事実今回のチャレンジマッチ契約書に再対決に対する内容があった。 グーグルはAlphaGoがイ・セドルに敗れる場合、必ず再対決をしなければならないと主張した。それで契約書もそのように作成された。だが、当時私たちはイ・セドル9段が敗れると思わなかったために再対決に対する内容を契約書に入れなかった。今になって考えれば本当に惜しい部分だ。”と打ち明けた。
 
一方グーグルのハサビスCEOは勝利後行ったインタビューで“私たちが持つすべての力量を今回の対決に集中したのでまだ明確な今後の計画はない”と話した。

ただし彼は“AlphaGoをさらに発展させる部分は把握した。 英国に戻って何週間かこれを観察してより多くの囲碁対局をするのか、または、研究陣が今回の対局を通じて得た人工知能技術を皆が知ることが出来るように公開するのか数ヶ月中に決めて履行するだろう”と話した。


 
 
 
#中国と日本、私たちは?
 
先に述べた通り中国と日本囲碁界は今回のマッチの主人公として自分たちが指名を受けることができない事を非常に惜しむ雰囲気だ。
 
グーグルは去る2010年検閲問題で中国政府と衝突した後、中国本土から多くの事業をたたんで撤収した。これまでPlayストアの空席はバイドウとシャオミなど中国企業が占めた。グーグルが世界最大市場中国を差し置いて韓国を指名したことはこのような背景のためという説もある。

どうなろうと最初の人工知能との対決がコ・ジェではなくてイ・セドルという事実に気を落とした中国囲碁界は再びAlphaGoとの対決を願っている。
 
中国新華社通信のキム・ギョンドン特派員は“コ・ジェをはじめとする中国棋士も当然AlphaGoとの対決を熱望している。条件だけ合うならば必ず応じるだろう。

ただし中国政府とグーグルの利害関係が障害物だ。 だが、再び中国市場進出を狙っているグーグルが市場再進入の交渉カードでAlphaGoカードを使うこともできると見る”としながら“対局場所が障害物になるならば香港やマカオなどの地で対決を推進するのも方法になることができるだろう”と話した。
 


保守的指向の強い日本は日本棋院などの囲碁界より一般ファンたちがさらに苦しがる雰囲気だ。
 
日本の2ちゃんねるで囲碁ファンたちは異口同音に“ものすごい戦いだった。天才棋士イ・セドルとプログラマーデミス・ハサビスが神の領域を見せた”としながら歴史に残る勝負だったと喝采を惜しまなかった。
 
だが空しい心も隠さなかった。“韓国は下落傾向にあった囲碁が今回の対決によって全国民的関心事に浮び上がった。囲碁を知らなかった人々が囲碁を習うと乗り出している。第2の中興期をむかえるようだ”と羨んで“反面日本は何の努力もない。 さらに囲碁の総本山という日本棋院ホームページには今回の対決に対するいかなる情報やニュースも見られない”と非難の声を高めた。
 
 
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▲飛禽島(ピグムド)故郷の地でイ・セドルの家族。左側から母、父、セドル、セナ、チャドル、サンフン(写真提供=韓国棋院)。
 
 
 
#世乭、囲碁で世の中を支配せよ…未来見抜いた父の鋭い洞察力
 
イ・セドルが生まれたところは木浦(モクポ)で船便で1時間30分余り離れた全南(チョンナム)、新安郡(シナングン)、飛禽島(ピグムド)、トゴの村だ。10才の時まで島で育った。
 
1998年癌で亡くなった父イ・スオに囲碁を習った。木浦(モクポ)で小学校教職生活をしてある日突然家族を導いて故郷である飛禽島(ピグムド)に戻った。

父は平凡な田舎農夫ではなかったようだ。ソウル教育大を出て大学時期に囲碁を習ったが棋才も相当した。 息子らと共にソウル旅行をしながら親しんだプロ棋士らと碁を打ったが二子で持ちこたえるほどだったという。
 
セドル(世乭)という名前は‘囲碁で世の中を支配せよ’という意味だ。あらためて彼の彗眼が驚くべきだ。
 
 
父は島で子供5兄弟姉妹全員に囲碁を教えた。その中で二番目のサンフンと末っ子のセドルがプロ棋士になり、三番目のセナは梨花(イファ)女子大学国文科を卒業して現在月刊囲碁編集長をしている。

セドルのすぐ上の四番目チャドルも囲碁を習ってアマ5段水準だが末っ子セドルに挫折感を覚えて勉強に転向、ソウル大コンピュータ工学課を卒業した。

家を早く離れた長男サンヒさんが実力が一番なくてアマ2段。サンヒさんもやはり梨大(イデ)国文科を卒業して後日ソウルで兄弟の面倒を見る。
 
父は朝になると末っ子に死活問題を渡した後、農作業にでかけて、仕事を終えて夕方に帰ってきて宿題を点検した。“文字もわからなかったのだが不思議にも囲碁問題だけはよくできた。”というイ・セドル。
 
8才下の弟より先にソウルに上がってプロ棋士になった兄サンフンはある日インタビューで妙な話をする。“事実私より弟の方がさらに上手く打つ” “弟とは誰なの?” “故郷にいる。今10才になった”そのようにしてセドルの存在が世の中に初めて知らされた。
 
以後セドルは兄についてソウル クォン・ガプリョン道場に入門、95年12才の年齢でプロに入門する事になる。
 
最近インターネットでイ・セドル家の‘優れたDNA’が話題だ。その中でセドルの兄チャドルの囲碁実力が弟にはおよばないので父が‘君は棋才がないから勉強でもしなさい’と話してチャドルは勉強に転向、ソウル大コンピュータ工学課に進学したという話が人気なのだが事実ではないという。

姉セナさんは“どこでそのような話が出てきたのか分からない。事実ではない”として笑った。
 
5兄弟姉妹の故郷の地である飛禽島(ピグムド)は現在の母パク・ヤンレ(71)さんが一人で守っている。
 
 
文/ユ・ギョンチュン記者
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