イ・セドルと人工知能に拍手喝采を送る

キム・ソンリョン9段の‘イ・セドルvsAlphaGo’息の詰まる観戦記

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▲ついに1勝。 どんな勝利より価値のある1勝だと話してイ・セドル9段はすべての負担を下ろしたように子供のようにあどけなくパッと笑った。


この記事は文化体育観光部で運用する[ポリシーブリーフィングwww.korea.kr]サイトにキム・ソンリョン9段が寄稿した文を転載したものです。○● [ポリシーブリーフィング]原文


世紀の対決は終わった。 
イ・セドル9段とAlphaGoの歴史的な試合を現場解説したキム・ソンリョン9段。 彼をはじめとする韓国囲碁界は衝撃…破壊…認定…歓喜そして熱い拍手で世紀の対決を表現した。 イ・セドルとAlphaGoのそばで感じた瞬間瞬間を聞いてみよう。




3月8日D-1 “同じ質問と終始一貫した返事” 

しばらくして覗いて見た携帯電話に知らない番号が無数にあった。 その電話番号の主は記者たち。
囲碁記者ではなく一般記者たちの気がかりなことは一つであった。 何対何でイ・セドルが勝利するか。 囲碁専門家たちの返事は一様だった。 イ・セドルの5:0勝。

理由は一つ。 6ヶ月前にAlphaGoを相手にした中国系樊麾2段の対局を見たプロがまだ人工知能が最高の水準とは差があるということを感じたためだ。 

だが、そのような肯定的な主観は数時間後、凄惨にめちゃめちゃになってしまった。



3月9日1局(イ・セドル敗北)“私たちはどれくらい己惚れていたのか” 

囲碁を業としているプロ棋士の自慢と傲慢がどんな惨事を起こしたのか目で確認した日だ。 AlphaGoの実力は想像以上だった。 

人間が考えにくい手が多かったし中盤に移って計算能力は人間の水準では耐え難いほどであった。 その上に得た事があるならば人工知能も失敗を見せるということ。

それが計算された失敗なのか、でなければ本当にエラーなのかを区別する事も難しかった。 人間の感情が排除された、あたかも株式プログラム売買技法と同様の損切りのような感じで打つ時もあって、反対に果敢に少しだけ利益報告を見て他に移る姿も見る事ができた。 

 

3月10日2局(2連敗) “私たちは君をアル先生と呼ぶ” 

衝撃で恐怖に陥った一日だ。 

初日油断したイ・セドルは開始から必死だった。 人生最高の一勝負を作ろうともがいた。 

ところが人間の欲が入り始めて囲碁はうまく解けなくなり始めた。 

AlphaGoが序盤から新しい感覚の囲碁を見せて驚いた。 囲碁は1930年代新布石時代以前の古代囲碁と以後の現代囲碁に分かれる。 

2016年をあえて定義しようとするならAI布石の時代が新しく開かれたのだ。 この時からプロ棋士はAlphaGoを人工知能と見ず"私たちが習わなければならない先生ではないか"に変わり始めた。 いわゆる‘アル先生’という尊称と共に。 

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▲以前には決して見たことがない'センノム(奴)'を前にして'センドル(強い石)'は死闘を行わなければならなかった。



3月11日3局(3連敗)敗北認めるイ・セドル、だが感づいた。“何かを捉えたんだ” 

イ・セドルが負けた時すべてのプロ棋士は酒場へ向かった。 
私たちの科学に対する無知と実力を反省し、また反省した。 囲碁プロ棋士の長所は敗北を認める速度が速いということだ。 審判が必要ないほどきれいな勝負をして見たら強者に対する優遇もやはりすっきりしている。 

ところがイ・セドルは違った。 落胆する必要があるイ・セドルは翌日明け方6時まで後輩2人と去る対局を分析してAlphaGoの弱点検索に没頭した。

3局は今回の五度の対決でAlphaGoが最も完ぺきだった囲碁だ。 
一言で一度の機会もなかった完敗。 

イ・セドルは記者会見でこのように話した。 “イ・セドルが負けたことであって人間が負けたのではない。”
あまりにもこのコメントが強烈なためなのか“AlphaGoも完ぺきではないようだ。”という後の話に気を遣う記者たちはいなかった。 

だが、プロ棋士は感づいた。 イ・セドル、弱点を捉えたんだな。 

 

3月13日4局(いよいよ初勝利)囲碁史に永遠に残る‘神の一手’ 白78

解説をしに放送局に行く足取りが軽かった。 プロだけが感じる直感がある。 

今日は可能性があるという考えが頭の中でずっとぐるぐる回った。 一般の人たちは100万ドルをのがしたイ・セドルの顔がなぜ1局よりさらに明るいのかわからず不思議がったがイ・セドルは秘密を知ったのだ。 

そして‘神の一手白78’。 囲碁史に永遠の一手として記録されるだろう。

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▲不利なフリカワリではないかと皆懸念する時、意表をついた奇想天外の一手、白78が打たれた。 AlphaGoはこの時からバグに近い手を連発して中押し負けのポップアップウィンドウを表示した。




3月15日5局(AlphaGo4勝1敗)AlphaGoがイ・セドルに“ひょっとしてあなたが神じゃないの?” 

果たしてどんな戦略を使おうか。 イ・セドルは不利な黒番を自ら要望した。 

黒番の勝率は48%。 勝ちたいならあえてこういう必要はなかった。 理由はどうせ勝負には負けたが白番では一度勝ったので黒番でも一度勝ってみたいという意味。 

他の見方をすれば人間の心理と反対に行くAlphaGoよりさらに反対に行く側はイ・セドルという感じすらした。 だから(一勝負)勝つことができたのか、という疑問と共に。 

最後の5局は最も激しかった。 予想とは異なる計算力を必要とする地合い碁様相だった。 

“これが話になるか。”イ・セドルは人工知能が最も上手にするという計算で勝つ戦略を持ち出すとは。 本当に常識はずれだった。 もちろん負けた。 だが、AlphaGoが人だったらこのように話したかもしれない。 
 
“この人が本当は神じゃないの?” 

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▲最後の5局後対局場で一緒に検討して物足りなさをなだめた。
 

夢のような1週間が過ぎた。 囲碁ができて以来東洋三国(韓・中・日)の注目をあびた勝負は多かったが全世界の注目をあびた囲碁勝負はかつてなかった。

それだけ今回の対決は囲碁グローバル化に大きい力を与えたしAI分野に劣悪だった国内科学界にも大きい助けになったのではないかと思う。 

韓国囲碁の地位も新たに変わったと見る。 結果をきれいに認める姿勢を見せて真の囲碁の粋は礼儀とフェアプレイということをみたメディアは人工知能に負けたのにもかかわらず、囲碁の価値を認めた。 

結局確かめてみれば1勝をして4敗もしたのだが4敗よりは1勝の価値をさらに認定したという点で韓国囲碁の地位はさらに上がったと見る。 

最近‘未生’、‘応答せよ1988’で囲碁を間接素材として扱ったドラマが列をなす中で今回の世紀の対決で囲碁界が得た最も大きいプレゼントの中の一つは囲碁のイメージが良くなったという点だ。 

特に女性たちには囲碁は古臭い暇つぶし、または年をとった人がするというケチから抜け出して勝敗を認める姿勢、負けたが対局場で自身が何を間違ったのか引き続き復碁をする姿を見て感動を受けたという方が多い。 

今回の事がきっかけで女性たちが囲碁の世界へ訪ねてくることを願う。 

また放課後、英語や数学等の塾に疲れた小・中学生。 これらに囲碁を習ってプロになれとは言いたくはない。 だが、囲碁を習ってアマ初段程度になるならばこの世で最も貴重な趣味の一つを持つことだと言いたい。 



キム・ソンリョン9段
1991年プロに入段して1995年最優秀新人賞、2004年電子ランド杯優勝、2011年囲碁リーグで優勝(ポスコ監督)し現在はポスコ ケムテック監督と世宗(セジョン)市囲碁協会専務理事、囲碁TV解説委員を受け持っている。 
 
原文記事:イ・セドルと人工知能に拍手喝采を送る