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[世界大会] [特集] 10回戦勝利の現場、重慶に行く(下)!

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   ▲歴史的な70年ぶりの10回戦はイ・セドルが6勝2敗をおさめて8局で幕を下ろした。これが10回戦の最後の場面だ。
 
 
10回戦8局は28日午前9時(韓国時間では10時)に始まるので前日8時までロビーに出るようにとの伝言を受けた。
 
6時30分に起きて食事をして支度を取りまとめて対局場へ向かう。選手たちは各自主催側で提供した車両を利用して対局場へ向かって韓国取材陣は中国記者たちと同じバスに乗った。
 
すでに勝負が傾いたためなのか今回の重慶での8局に中国記者たちの姿は数人しか見られない。おかげでバスの中は静かな方。中国の人々は声が大きくて一緒にいれば苦しいが、万一古力がリードしていたとすればどうなったか、くらっとする。
 
対局場の前でイ・ヨンホさんに会ったがイ・セドル9段は朝食をよく食べたという。イセドル9段は本来好き嫌いが激しい方だと思っていたが、私が正しく知らなかったのか中国で全く食べ物で苦労したことがないという。いや、かえって韓国よりよく食べるようだという言葉も出る。
 
ただし睡眠はまともにとることができなかったと。前日記者会見を終えて直ちに宿舎に戻ったが9時まで一緒に時間を過ごして先に部屋を出たというのに、ずっと外から騒々しい声が聞こえて明け方3時頃にやっと寝ついたという。
 
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   ▲古力の最初の着手.イ・セドルはコミが7目半なら白が気楽だという。選択できるならば無条件で白を選ぶという。だが、賞金がたくさんかかった大きい囲碁の最後の対局ならば黒を持つと話した。
 
 

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   ▲ 10回戦が最後に駆け上がっているのに中国関係者たちの姿があまり見られないのは古力がすでに5敗を当てられたためだ。これから残った3局を全部勝って引分けになるしても人々はイ・セドルが手を抜いてくれたものと思うかも知れない。中国でもこのような雰囲気をよく知っているようにすでに半分ぐらいは諦めた雰囲気の中で8局が行われた。
 
 
午前8時55分.イ・セドル9段が先に対局室に入る。直ちに椅子に着座した後、水一杯で思いを整える姿.特別な対局小道具は見られない。古力は9時定刻に対局場に入った。互いに軽い目礼をした後対局開始.10回戦最後の対局はこのように幕が上がった。
 
対局開始写真を撮って対局室ドアを開けて出ると、古力の配偶者と娘の姿が見える。
 
古力の夫人ルィ・ウィアンはアジア競技大会体操金メダリストという。現在の北京近隣体操大学で教授として在職しているというのに体操選手出身らしくスマートな体とスタイルが印象的だった。だが、古力の娘はママよりはパパに非常に似ていた姿.特に目元がパパによく似ていた。
 
10回戦1局でイ・セドルは現在カナダに居住中である夫人と娘を同行させて勝利をおさめたが果たして古力にも幸運が伴うのか気がかりだ。
 
 

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▲ようやくパッと笑っているイ・セドル9段.
 
 
 
■イ・セドルは‘囲碁の技術’ではなく‘戦いの技術’を知っている。
 
対局が始まった後今回の10回戦を初めから見守ったイ・ヨンホさんに今回の10回戦に対して気になった点をインタビューした。
 
-今回の10回戦開始の時から重要なことをしたと聞いた。
 
事実10回戦の開始は偶然の機会でなされた。中国のある大会が終わってイ・セドル9段と古力9段、古力の先輩の王煜輝 7段が一つの席に集まって酒一杯一緒にする機会があったがここで10回戦に対する言及が初めて出てきた。
 
イ・セドルと古力は成功さえすればいつでも応じるという立場であったし、私がイ・セドルの立場を中国と調整する役割を受け持った。王煜輝がスポンサーとの調整および全体日程を担当する役割をした。
 
そして梦百合杯を後援するニ・ジャンゴン会長が10回戦後援を引き受けることになって急速に弾力がついた。
 
-難しい点はなかったか?
 
あまりなかった。細部的な事項は常にイ・セドルと相談して決めたが大きな問題はなかった。
 
-大会スポンサーが二つだったと聞いた。どうなったことなのか。
 
メイン スポンサーはホンカン家具のニ・ジャンゴン会長が合う。会長が今回の10回戦に700万中国元を当てた(韓貨約12億ウォン).この中で賞金で500万中国元が策定されたし残りは大会運営費で策定された。
 
もう一つのスポンサーはいわゆるサブ スポンサーだ。メイン スポンサーがすべての経費を出す私たちとは概念が違う。中国でメイン スポンサーは大会の賞金と基本運営費だけを出す。残りは企画会社が10回戦という立派なコンテンツを通じて対局場所を物色することになるのだが、この時幼稚なところは選手招請経費とその他経費を負担する代わりに放送中継料と広報に対する権限を持つようになる。
 
この企画会社を今回王煜輝が引き受けたのだ。これまで7局まではサブ スポンサーを探すのに別に問題はなかったが古力9段が7局でも敗れて先に5敗にあうとすぐに今回重慶でメイン スポンサーを引き受けることにしたところが誘致をあきらめたのだ。それで今回の大会運営は多少困難があったのだ。
 
 

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   ▲ホームグラウンドの利点がかえって古力に毒になったことではないだろうか。5局逆転負け以後古力は急速に力が落ちたし、結局5局から8局まで四局をずっと負けて8億 5000万ウォンの賞金をイ・セドルに渡してしまった。
 
 

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▲古力を応援するために遠く北京からワン・ルナン中国棋院院長をはじめとしてタン・シャオ、ワン・レイ、ワン・シー、タン・イーフェイ、マ・シャオビンが重慶を訪れたが古力の大きい助けにはならなかった。
 
 
-中国メディアで大会場所を誤って選択したという指摘があったという。どういう意味なのか?
 
昨日イ・セドル9段も少しの間言及したが10回戦場所が対局するにあたって最上の場所だったとするのは難しかった。特に5局が開かれたシャングリラと7局のチベットは中国でも辺境地のうちの辺境地と指折り数えられる所だ。
 
二ヶ所全て海抜4000メートルを越える所で移動および現地適応にも無理がある所だった。一言で対局場所としては最悪であったという話だ。
 
古力は特にシャングリラで開かれた5局が惜しかっただろう。1局と2局を失って3局と4局を勝利して勢いを乗ったがシャングリラで開かれた5局でみな勝った囲碁を逆転された。7局チベット対局も同じだったのではないか。イセドル9段が相対的に体力が良くて最後まで耐えて逆転勝ちを引き出したという話もあるが実際古力には非常に大変な日程だった。
 
イ・セドルは対局二日前ぐらいに入ってきて休んで対局に臨めば良いが、古力はホスト側だったではないか。知らず知らずスポンサー主催行事にも参加しなければならないなど囲碁外敵でも大変な日程であっただろう。それで7局が終わって中国現地では10回戦の無理な日程を批判するメディアの報道がずっと続いた。
 
 

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    ▲古力の夫人ルィ・ウィアンと娘も共に重慶を訪れた。
 
 
 
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   ▲対局場入口.世界的な大会のフィナーレにふさわしくなく閑散としている姿です。
 
 
-それなら誰の責任というものなのか?
 
どうしても企画を引き受けた王煜輝に非難があふれた。収益を出すことができるサブ スポンサーに言いなりになって見たら結果的に場所選択を誤って選択したし、これはそっくり古力の負担につながって5局から連敗につながったということだ。間違った話でもないが古力が勝ったとすればこうした話も出てこないことだし、このような面では魔女狩り的な側面もあるだろう。
 
-イ・チャンホ9段が中国で対局をする時影のように随行員役割をしたし、今回はイ・セドル9段のマネジャーをした。どんな感じなのか。
 
二人とも囲碁上手だが本当に大いに違った。特にイ・セドル9段の普段囲碁に対する愛情と没入は想像を超越するほどだ。
 
兄の場合も囲碁が好きだけれど毎日見るのではなくて対局がない時はわざわざ遠ざけたりもするのにイ・セドル9段は全く違う。普段にも囲碁が生活の人だ。多くの対話主題も囲碁で帰結されて対局も楽しむ。退屈すると相手を選ばない。
 
私はインターネット囲碁で5段程度水準なのだが周囲に本当に人がいなければ私でも置こうとするほどだ。5子で何度か置いたがそうだといって手を抜く事もない。見たことも聞いたこともない手で勝って行くのにあきれるほどだ。
 
いつだったかはまた、一緒に置こうというのを申し訳なくて周囲を見ると黒嘉嘉が近くにいるので “君、イ・セドル9段に一度習う機会があったら置いてみるか”と話したところすぐに良いというので斡旋したところ即席で親善対局がなされたこともあった。笑わせたのはその囲碁で黒嘉嘉が勝った(笑い).
 
他の事は全部耐えられたのだが、囲碁の技術的な面や対話で話にならないのでその点がずっとイ・セドル9段に申し訳なかった。
 
 

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    ▲ "私が勝った"イ・セドルが腰をいっぱい伸ばして勝者のポーズに代わっている。
 
 
-中国で10回戦リベンジマッチを提案しはしないだろうか?
 
難しいだろう。イ・セドル9段と釣り合うカードがない。現在ス・ウェ、タン・ウェイシンなどが上手く行くようだが、中国内で彼らが占める比重は古力に比べてはるかに及ばない。一言で格が違うということだ。
 
そして誰だろうが10回戦でイ・セドル9段の相手になるには不足するとみられる。スウェが囲碁の技術的な部分で現在のイ・セドルを先んじるかも知れない。だが、10回戦は‘実力’で全てを説明することはできない。イ・セドルは‘囲碁の技術ではなく戦いの技術’を知っている人だ。現在10回戦で彼に適う棋士はないと見る。 中国の方でもこれをよく分かっていることだと思う。
 
 

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    ▲ 10回戦8局勝利でイ・セドル9段と古力9段の公式戦績は22勝1分け21敗でイセドル9段が一歩先に立つことになった。(非公式である2009年南方将軍杯と2013年天神薬業杯を含めば24勝1分け21敗でイ・セドル9段リード)
 
 
■囲碁歴史上最高額の賞金
 
すでに報道を通じて良く知られた通りイ・セドルは8局でも勝利、総合成績6勝2敗で10回戦を終えた。序盤はいつもそうしたように古力が良く見えたが中盤後、辺の戦闘で黒3子が落ちていっては黒に機会がなかった形だ。
 
どうしても故郷で最後を飾る事ができなかった古力は300手超えて食い下がって追撃戦を広げたがついに逆転には至らなかった。
 
4局の敗北以後破竹の4連勝.これでイ・セドルは先に6勝の山にのぼって優勝賞金500万中国元(韓貨約8億 5000万ウォン)の主人になった。今まで開かれた囲碁大会歴史上最高額の賞金だ。
 
主催側は重慶でイ・セドルの10回戦勝利が決定されるかも知れないということを分かりながらも授賞式を準備できなかった。これまで誰が勝とうが対局後公開解説場で一緒にインタビューをした慣例まで省略して、急いで対局を終えた。
 
普通の場合だったら大変な失礼だが一方では彼らの心情も理解できた。古力が故郷である重慶でイ・セドルに10回戦優勝賞金を渡すだろうと誰が分かっただろうか。
 
 

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対局が終わって約30分間の復碁を終えたイ・セドル9段は一番最初に韓国取材陣のインタビューに応じた。その中で印象的な質問いくつかを要約すれば―
 
 
“応援してくれたファンたち、そして10回戦のために熱心にしてくださった方々、この席で取り上げ論じるのが合うのかわからないけれども相手であった古力9段と後援を引き受けたニ・ジャンゴン会長に深い感謝申し上げる”と優勝所感を伝えた。
 
“昨年に開いた春蘭杯と三星火災杯で準優勝に留まったことは囲碁の他にも複合的な理由があっただろう。体力や年齢こういうものはまだ大きな問題でないと見る。世界大会で成績を出せなかったがその時は10回戦が最も重要だったためにこちらに焦点を合わせた。もう10回戦が終わったので今からが再び重要だ。率直に話して世界大会と10回戦、2つで全部成績を出すということは私の能力を超えたことだった”とこれまで世界大会で振るわなかった理由を説明した。
 
“5局が最も記憶に残る。先に2勝をおさめた時とても安易だと考えた。結局3局と4局はもちろん他の対局でも2敗にあって当時4連敗にあった。個人的にとても難しい時期だったが5局の内容も終始良くなかった。そうしたことを相手の失敗に力づけられて逆転したので本当に運が良かったようだ。 結局シャングリラとチベットなど山岳地帯での対局が古力には悪く作用したようだ”と印象深い場面を回想した。
 
“10回戦が再び開かれることは大変だろう。10回戦を成し遂げるには基本的にカードが合うべきなのに相手がない。10回戦というものが単純に現在の第一人者だとして行われる事ではない。互いにライバルであってこそ、積んだ業績も似ていて最小限世界大会で5回程度は優勝カップを上げた経験もなくてはならないだろう。 誰が相手になろうが自信はあるが現実的にさらに多くの10回戦は不可能だと見る”と以後の10回戦を展望した。
 
 

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10回戦が終わった翌日イ・セドルは先立って重慶に来た一行らと共にソウルに戻った。
 
"これからは賞金がすべて少なくて囲碁が味気ないことではないか”と尋ねたところ“10月14日から三星火災杯16強戦が始まります。16日8強戦終わればここにおられる記者の方々と再び集まって一度食事でもします“としてにっこり笑って入国審査台を出た。
 
 
文・ユ・ギョンチュン囲碁ニュースチーム長